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研究テーマResearch

(1)T細胞代謝・エピゲノム調節による免疫システム制御法の開発

 私たちは、抗原認識により誘導される代謝リプログラミングとそれに続くエピゲノム変化が、T細胞免疫系に及ぼす影響を解明し、それを制御するための方法論を確立することを目的に研究をおこなっています。

 ナイーブT細胞は、脂肪酸酸化や低レベルの解糖を介して供給されるアセチルCoAなどの代謝産物を利用してミトコンドリア内で酸化的リン酸化をおこなうことでATPを産生し、その生存を維持しています。一方、抗原認識に伴い、T細胞では嫌気的解糖が亢進するとともに(ワールブルグ効果)、ペントースリン酸経路が活性化し、クローン増殖が開始します。それに加え、活性化したT細胞では、グルタミン代謝が亢進することが知られています。抗原認識によってT細胞で誘導される代謝変化は、がん細胞の代謝状態に類似したものですが、可逆的であり、抗原排除後に長期間生体内に残るメモリーT細胞では、再び、ナイーブT細胞と同様の代謝経路が使われます。

 当研究室では、T細胞エネルギー代謝の中でも、特にグルタミン代謝に着目して研究を進めています。活性化T細胞において、グルタミンは必須アミノ酸として機能することは古くから知られていましたが、抗原認識に伴うグルタミン代謝の活性化機構は完全には解明されていません。さらに、グルタミン代謝産物であるアルファケトグルタル酸(-KG)は、ヒストン脱メチル化酵素(KDM2-7)やDNA脱メチル化酵素(TET1-3)の基質となることから、グルタミン代謝がT細胞運命決定のエピゲノム制御に関与していることが想像できますが、それに関する研究はほとんどおこなわれていません。

 そこで、私たちは、T細胞グルタミン代謝の活性化機構と細胞運命決定における役割を解明するとともに、その制御法を確立することで、免疫疾患の治療やがん免疫療法、ワクチン開発、慢性感染症の克服につなげたいと考えています。
 現在進行中の、具体的な研究課題は以下の通りです。

  1. T細胞におけるグルタミン代謝活性化機構の解明
  2. グルタミン代謝を介したメモリーT細胞分化制御機構の解明
  3. アレルギー性炎症におけるグルタミン代謝の役割解明と制御
  4. メモリーT細胞分化におけるストンH3K27脱メチル化酵素の役割解析

(2)T細胞老化・疲弊制御機構の解明

 T細胞老化・疲弊は、担がん状態や慢性感染症における免疫機能の低下の原因とされています。T細胞疲弊誘導の一因として、PD-1やCTLA-4などの抑制性受容体の高発現があげられます。近年、メラノーマや肺がんに対する抗PD-1抗体(または、抗PDL-1抗体)の治験が行なわれ、非常に良好な結果が報告されています。この結果を受け、抗PD-1抗体の適用拡大や、抑制性受容体を標的とした新たな抗体医薬の開発が進められており、抑制性受容体の阻害薬が免疫チェックポイント阻害剤として有効であるとの共通認識が形成されています。そのため、T細胞疲弊や老化の分子機構を解明することは、担がん状態や慢性感染症、高齢者における免疫力低下を改善する方法論を確立する上で非常に有用です。
 これまで、T細胞老化・疲弊研究が進まなかった要因の1つに、適切なモデル系がなかったことがあげられます。私たちは、T細胞老化・疲弊の分子メカニズム研究をおこない、腫瘍抑制因子Menin欠損CD4 T細胞が、活性化後のごく早期に細胞老化・疲弊の表現系を示すことを見いだしました(Kuwahara et al. Nature Commun. 2014)。

 さらに、Menin欠損CD8 T細胞においても同様の早期老化・疲弊様の形質が誘導されたことから、MeninがT細胞老化・疲弊を制御する分子であることか明らかとなってきました。特に、Menin欠損CD8 T細胞においては活性化の早期に抑制性受容体が高発現するともに細胞増殖が早期に停止すること、担がんマウスへの抗原特異的T細胞養子移入によるCD8 T細胞依存的抗腫瘍活性低下すること、抗原特異的な免疫記憶形成能が著しく低下することなどが明らかとなり、Menin欠損マウス及びMenin欠損T細胞が、T細胞老化・疲弊解析のための良いモデルとなると考えられました。
 さらに、私たちはグルタミン代謝の亢進とそれに続くエピゲノム変化誘導が、T細胞老化・疲弊が密接に関連していることを見いだしており、グルタミン代謝とT細胞老化・疲弊の関係についても興味を持ち研究をおこなっています。

 現在進行中の、具体的な研究課題は以下の通りです。

  1. 腫瘍抑制因子MeninによるCD8 T細胞老化・疲弊制御機構の解明
  2. T細胞老化・疲弊と代謝リプログラミング
  3. T細胞老化・疲弊のエピゲノム制御
  4. T細胞老化・疲弊制御による腫瘍免疫賦活化法の開発

愛媛大学大学院医学系研究科
免疫学・感染防御学講座

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